退化器官に発生するがん

がんの一種でも発症は稀

病棟

人体にあるさまざまな器官のうち、成人になるとほとんど意味がなくなる部分があります。胸骨の間にある胸腺という小さな器官もその1つです。胸腺は小児期から思春期にかけての時期に免疫細胞を作る働きをしています。成人になると役割を終えて徐々に小さくなり、やがて退化していきます。この胸腺に発生したがんのことを胸腺腫瘍と呼びますが、発症確率は極めて稀です。通常は進行速度が遅いため症状がなかなか表れず、健康診断などで偶然発見される例が多くなっています。咳や胸の痛み、呼吸困難といった症状を自覚するようになるのは、腫瘍がかなり大きくなっている証拠です。胸腺自体は成人にとって必要でない器官なので、そうした症状は肺など他の臓器に影響を与えることから発生します。胸腺腫瘍には胸腺腫と胸腺がんの2種類があります。前者と比べて後者は発症例がさらに少なく、進行速度が早いため症状が出やすい点が特徴です。いずれも病期は周辺組織にどれだけ浸潤しているかによって決まってきます。診断に先立っては胸部X線検査やCT検査・MRI検査・超音波検査の他、疑いが濃厚となった場合は針生検などの病理検査も実施されます。

忘れた頃の再発に注意

胸腺腫瘍の治療法は病期によって異なりますが、幸運にも早期に発見できれば外科手術によって完治も可能です。胸腺そのものは他の臓器と違って成人では有効な働きをしていないため、摘出しても身体機能に影響は及びません。腫瘍が大きくなっていて肺などの一部も切除した場合にのみ、息切れなどの症状が出ることもあります。再発予防の目的や諸般の事情によって手術ができない場合には放射線治療が実施されます。手術よりは負担の軽い治療法ですが、放射線の照射された部位には副作用も発生します。副作用は転移したがん細胞に対する抗がん剤治療でも見られます。胸腺腫瘍にはホルモン治療も有効です。ステロイドと呼ばれるホルモン剤を投与することにより、がん細胞の増殖を止めることができるのです。抗がん剤との併用でホルモン治療の効果をさらに強めることもできます。こうした治療で胸腺腫瘍を治すことは可能ですが、治療後も油断はできません。10年以上経ってから忘れた頃に再発する可能性もあるので注意が必要です。長期間にわたる経過観察は重要ですから、一度胸腺腫瘍で治療を受けた方は定期的に検査を受けることが再発時の早期発見につながります。

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